2023年11月17日、心筋症闘病生活17日目。
みーさんは、久々にソファの上で眠っている。全く起きる気配がない。
今日午後1時50分、みーさんは旅立っていった。
こんなに早くこの日が来るとは思っていなかった。
朝一番におしっこをしているか確認した。昨日の寝る段階で、丸一日おしっこが出ていなかった。深夜にしてしまうとお尻が気持ち悪いだろうなと、申し訳ないがオムツをはいてもらった。
朝脱がせたが、おしっこをしていない……
食欲もない。スプーンから数口水を飲んで、ちゅーるを食べただけ。薬も飲めそうな状態ではなかった。以前同じ病気で猫ちゃんを亡くした友達から借りていた聴診器で心音を聞いてみた。心臓の音がかなりゆっくりで小さな音になっている……
何となく胸がザワザワしたので、動物病院にLINE。診てもらった方が良いか連絡を待つことにした。
そして親に電話。今日の様子だと週末が山場かもしれないから、生きているうちに会いたければ来てほしいと伝えた。
先生から電話がかかってきた。おしっこが出ないのは、血流が悪くなって腎臓がおしっこを作れなくなっている可能性があるとのこと。首もすわっていないような状態なので、もう心臓が厳しい状態にあること。今日は天気が悪く寒いので、外に出すと心臓にショックを与えてしまう可能性があること。
それらから判断して、自宅で様子を見る決断をした。先生にも覚悟を決めますと話をした。
心拍数をカウントしてみた。
10秒間の数×6で計算してみてと教えてもらった。10秒でたったの6回しか鳴っていなかった。1分間にたったの36回。通常は120~140回らしい。まるで電池が切れかかっているみたいだ……
2日前の水曜日に胸水は抜いていた。だから呼吸はそこまで苦しくないはず。ということは、このままゆっくり老衰のように眠ってしまうかもしれない。自分の中で確信めいたものを感じた。
今日が山場かもしれない……親に再度電話。明日だといってしまうかもしれない。できれば今日来てほしいと。
ここ数日ひどくなっているチック症状が出ている。まるで咳のようにケフケフ言っている。少しでもリラックスしてほしくて、久々にエレクトーンを弾いてあげることにした。
コロナが流行る前はレッスンを受けていたので、毎日のように弾いていた。みーさんは腕を組んでテーブルの上から聞いていることがよくあった。みーさんは音楽が好きだった。
久々なのでまともに弾けるかわからない。かつて練習していた楽譜で簡単そうなものを選ぶ。
リメンバー・ミー。
ディズニー映画の曲だ。
Remember me
https://www.worldfolksong.com/kids/disney/remember-me.html
Though I have to say goodbye
Remember me
Don't let it make you cry
リラックスしてくれたかは分からない。でもかつての彼女を想像すると、たぶん喜んでいただろう。
しばらくして、みーさんのチック症状が酷くなってきた。大きく咳のように「カッ!」と言う。苦しそうだ。
弾くのを止めて傍にいることにした。今日は偶然、相方が午後は自宅にいたので、昼ごはんを買いに行ってくるから!と買い出しに行ってくれた。
みーさんと二人きり。何となく胸がザワザワした。たくさん撫でて、話しかけた。桜の季節まで待てないのかい?1月は誕生日だよ?今まで楽しかったね。まだまだここにいてもいいんだよ?ちょっと疲れちゃった?
悪かったはずの天気。雲の隙間から太陽が一瞬差し込んできた。あぁ……時が近づいているのかもしれないと瞬間的に思った。そして「写真撮るよ??」と言って一枚撮った。
「ありがとね。楽しかったよ。喧嘩もいっぱいしたね。私の相棒。ありがとね。」そう言って背中をハグして間もなく、大きく「カッ!!」と言って、泡のようなものを少し吐いた。
大丈夫!!しっかりして!!と言ったら、一瞬意識が戻りかけたように見えたがスッと力が抜けたようだった。
にゃむちゃん!!!!にゃむちゃん!!!!起きて!!!と泣きながらなんども叫んだ。大きな発作もなく、スッと力が抜けた感じだったので、旅立っていったと確信が持てなかった。
買い出しに行った相方はなかなか帰ってこない。ショックを受けていたので、気持ちを切り替えるために歩いて行ってしまったのかもしれない。スピーカーにして電話をかけ続けた。早く戻ってこないと、本当にいっちゃうよ!と。
結局電話はつながらず相方が返ってきたときには、私は泣き崩れていた。
相方も、みーさんの穏やかな表情に旅立ったと確信が持てないでいた。
おなかを見たが上下運動がない。聴診器を当ててみたが、何の音もしなかった。本当に旅立ってしまったんだね……
おつかれさま、おつかれさま。ありがとうね!と何度も伝えた。
本当にありがとうね。ワガママで人間臭くて本当に変な相棒。癖が強いから、きっと落ち着いてからさみしさがが増してしまうかもしれない。
休む間もなく、みーさんを整える準備を始めた。
父親が亡くなった時に手順を見ていたから覚えている。
猫のターミナルケアの本も意を決して買っていた。だからてきぱきできた。
まず体を拭いてあげて、ブラシをかけてあげて。少し開いてしまっている目を閉じるために、ごめんね~と言いながらサージカルテープでしばらくとめた。
愛用のベッドに水枕を引いて寝かせた。いつもやっているように腕はクロスさせた。おなかと背中にもタオルで巻いた保冷剤を添えた。
2~3時間で死後硬直が始まる。そして体液が出るかもしれないので、小さな鼻に小さなティッシュを詰めて、お尻の穴にもティッシュをたたんでテープでとめた。
枕を引いて毛布を掛けてあげて。おもちゃと3人で撮った写真を添えた。そして、トレーに元気な時に食べていた缶詰とお水を用意した。
まるで眠っているようだった。あまりに気持ちよさそうな寝顔で安心した半面、生きているようで悲しかった。
しばらくして母親が来た。みーさん、お母さんだよ~がんばったね。ほんと眠っているみたいだね。と話しかけていた。母親は私が旅行や出張の度に、みーさんを預かってくれていた。
お願いしていた花が道中見つからなかったというので、探してきてもらうことにした。
フリージア。
なんでフリージアにこだわるかと言うと、彼女の血統書に記載されている名前が「Fresia of god mountain」だからだ。神の山に咲くフリージア……だからフリージアを飾ってあげたかったのだ。
なんとか探してきてくれた。大量の黄色いフリージア。花言葉は「無邪気」。みーさんに似合っていると思う。
夕方6時半。動物病院の先生に挨拶に行った。17年間、子供のころからお世話になった先生には、最期のお別れをしてほしかったから、車でみーさんも連れて行った。
先生は「よく頑張ったね~本当にいい顔して眠っているね……」と頭を何度も撫でてくれた。そして涙を流してくれた。
みーさんは先生にしかまともに爪切りをさせなかった。だから、動物病院は苦手だけど、先生のことはきっと好きでしたよ?と伝えると嬉しそうにしていた。
みーちゃんは肺が水でいっぱいになるギリギリまで我慢して、本当に強い子だったね。一時期、転勤に付いて行って体調を崩して。そのせいで糖尿病を患っても克服して。本当に強かったねと。
生きる気力の強い子だったねと。本当に生きることに執着しているようにパワフルだった。そりゃぁワガママがこんなに言える環境はここ以外にどこにもないでしょうから。笑
帰りは少しドライブして帰った。みーさんは車が好きだった。
「みーさん?まだ寝てるの?よく寝るねぇ。ドライブして帰るからね!」
みーさんは後部座席でぐっすり眠っていた。しばらく眠れなかった睡眠を取り戻すかのように。
みーさん。おつかれさん。ありがとう。
いつも一緒にいるよ。だって腐れ縁の家族だから。